二択と酬錯

不応卦があると仮定したところで、だからどうなんだと言われたらそれまでの話、得卦が応か不応か見分けるすべがない以上は、結局のところ示された卦爻と睨めっこして何とかそれらしい断を下すより他はない。

真勢流では、得卦が神明に酬錯しているかどうかを験するのに、得卦の内卦と二爻の爻卦が同じか、外卦と五爻の爻卦が同じであれば、これを酬錯していると見做すとしているが、こんなものが役に立たないのは火を見るよりも明らかだろう。

仮令、これが卦の応不応を弁別するのに有効な手法であったところで、爻卦が表出されない筮法においては用いられない判定法な訳だから、中筮使い以外には無縁のものである。

ところで、勘違いされては困るが、私は誤占が全て誤卦に起因する等と言った覚えもなければ、そのような馬鹿げた事を考えた事もない。

占者の占考が至らずに表出された卦象や辞を読み解けず、正答に辿り着けない事は往々にしてある事で、自らもそのような苦い経験を少なからず持っているからだ。

ただ、少し思うところがあるのは、現代の易占家は誤占を回避する一つの方法として占的を工夫し、二択に絞り込むような設定をするのが普通になっていて、そうすると不応だろうが何だろうが、所詮二択というのはヤマ勘でも五割の率で当たってしまう訳だから、神明に酬錯した結果として的中を見たのか、単にヤマ勘が当たっただけに過ぎないのか、何とも言えない事例があるような気がせぬでもない。

勿論、こんな事を言いだしたらキリがないのだが、胎児の性別占などは特に此の傾向が強く、包卦になっている判り易いセオリー通りの得卦を除けば、結局はどこまで易の効用を認めて良いのか難しいところがあるようにも思われる（かつて汎易の古い会員で職業柄胎児占ばかりやって其の統計を発表していた産婦人科医が居られたけれど、的中率は6割程度だったという。これでは易占による有意差はたったの10％としか見做せないような気がする）。

ところで、今年5月に夏のオリンピックが開催されるかどうかを大衍筮法で問い、地天泰之震為雷を得たのだが、正直言って卦読みに難儀した。

スポーツの祭典で之卦に震為雷というのは如何にもという感じがする等と、これは後からなら何とでも言えることで、通常本卦に泰を得てそれが別の卦に変化するのはあまり良い意味に取らないのが基本であるし、震為雷というのも実体が伴わないとかカラ騒ぎ等の意を見るから、やるやると言って結局また延期にでもなるんじゃなかろうか、という気もする。

此の時は迷った末に或る種の基準卦めいた観方をする事にし、上下をひっくり返して天地否之艮為山であったら即座に中止と判断しただろうから、泰之雷で今年は開催かと判断した。

と言っても自信はなかったし、占的は単純な二択だから、どんな得卦だったところで五割の率では当たった事になる。