『周易正義訓読』野間文史訳注
- 2021/10/14
- 18:36
『周易正義訓読』野間文史訳注(明德出版社/2021年刊)
明徳出版社から上梓された野間先生の『周易正義訓読』を春にある方より恵与された。
ちょうど購入しようと思いつつ、分厚さと価格に二の足を踏んでいた矢先の事だったので大変有難く思って拝受したのだが、一読これは便利な本だと思った。
『周易正義』について、拙ブログの読者諸氏には今更贅言を弄しての解説など不要に違いないが、『周易正義』の底本として魏の王弼注本が選択され、王弼が注を書かなかった繋辞伝以下の翼伝については晋の韓康伯注によって補われた結果として、今日我々が用いる『易』のテキストが王弼本と韓康伯本のハイブリッドになった訳で、言ってみれば現行の『周易』は『正義』により定まった形であり、手元にある易本は基本的に全て遡れば『正義』に行き着く、或いは『正義』を経由したものだと言い換えて良い。
当然、誰もが所持しているような易経解説書も其の盡くが『正義』の注釈を何らかの形で引いている訳だが、いざオリジナルに当たろうとすると途端に古めかしい線装本を紐解くか、読みにくい事この上ない現代中国の簡体字本を開くかの二択しか無かった。
現代語訳無しの読み下しに僅かな校勘を付しただけの硬派な書物といえど、正義に触れるハードルが格段に下がった意味は大きい。
このところ、明徳出版社は『王弼の易注』やら伊藤東涯の『周易経翼通解』やらの易注を精力的に出版しているようだが、むしろこれらは遅きに失した感がある。
しかし、だからこそ大いに歓迎すべき出版事業と言うべきで、この調子で『周易折中』や『周易述義』『周易訂詁』『周易集注』など明清の易注もなんとかしてもらえないものか。
スポンサーサイト