『世界と日本の 地理 風水』目黒一三著
- 2022/07/18
- 16:35
此度、長らく“幻の本”として定価の十倍を超える古書価で取引されていた三代目目黒玄龍子著『都市の見えないメカニズム』が装い新たに復刊されることになった。
実に二十八年ぶりの再刊である。
此の本については随分前に一度記事にしているが、今回再刊に当たって若干の協力をさせて頂くことになり、久しぶりに読み返す機会を得、改めて其の内容の素晴らしさに感じ入った。
占いに格別の関心を持たない極く普通の知識人の味読にも充分耐え得る殆ど例外と言って良い風水本だろうと思う(私自身が風水の門外漢であるだけに少なくとも此の点だけは保証できる)。
本書の第一の特徴は、一つの都市論として極めてユニークで且つ斬新な内容を持っていることである。
よく何かしらの占術を帝王学だ等とぬかす大仰な言を目にすることがあるが、本書はまさに為政者が読むべき本という点で、或る種の帝王学的側面を持っていると言えるかもしれない。
言い換えれば、家のどこそこの方角にこんな物を置くと金運が上がる、といった体の個人救済的なちんまいものではなく、其の点、風水で開運をという目的で本書を手に取ったところで何等期待に応えてくれるところはないであろう。
大体において昨今の風水本(これは子平など他の占術分野にも共通して言えることのように感じられるが)は、大陸や台湾におけるそれを輸入したものが多く、本場から持って来た正統なるマジモンによって日本式に歪められた陳腐な体系を駆逐せんとする方向性を持っているように思われる。
しかし、本書はもとより風水師でなかった二代目目黒玄龍子のアイデアを元に発展させたものであるから、従来の伝統的風水学とは考察の出発点からまるで異なっていて、其の点では真の意味で独創的な日本発祥の風水学と言えるかもしれない。
いずれにせよ初版時に風水色を一掃した為、適切な読者を得られなかった本書が今度は正当な評価を受けることを期待したいと思う。
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