『木村康一教授論文抄録集1927~1965』
- 2022/08/07
- 10:16
神奈川から録画視聴コースにて受講されているY氏とは目下面識こそ無いものの、偶然にも庵主と諱が同じ(漢字は違うが読みは同じ)で誕生日も一緒という偶然にしては出来過ぎた符合を以て申込時に庵主を驚かされたのだが、現在のお住まいが昭和45年に102歳で没した母方の曾祖母の居宅から目と鼻の先という点にも何やら見えざる手の働きを感じさせられた。
それはさて置き、Yさんは庵主の睨んだところ、ビブリオマニアの範疇に属する熱烈な古書の愛好家であられるらしく、神保町を中心に古書店や古書市を徘徊しては日夜古書の渉猟に余念が無いようだ。
庵主でさえ見たことも無いような稀覯書を多く見聞されているらしく、かかる御仁が初学者向けの拙易学講座に申し込まれたのは今にして思えばそれこそ不思議な気もするが、いずれにせよ楽しんで受講してくださっているようで、他の録画視聴組がうんともすんとも言わない日本人特有の大人しさを発揮している中、時折御感想を送って下さるのが有難い。
また、このYさん、古書店で掘り出した本の中に庵主向きと思われたものがあると御恵送くださることがあり、すでに三冊の面白い書物を恵与されている。
一冊目は原書房で発掘されたという『木村康一教授論文抄録集』で、今の人達にはピンと来ないかもしれないが、かつて刈米達夫(1893~1977)と並んで我が国の生薬学界を牽引した木村康一(1901~1989)の論文抄録集である。
昭和40年に京都大学を定年退官される際の記念事業の一環として企画された小冊子であるが、公立では富山県立図書館のみに架蔵される稀覯書であるらしい。
戦前から定年退官までの40年近い期間に著わされた各論文の抄録は眺め見るだけでも楽しいこと無論であるが、それ以上に面白く啓発的であるのは「生薬学40年」と題された僅か十頁に満たない小篇で、木村康一の生薬学に対する態度や考え方がよく分かる内容となっている。
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