準素読方式
- 2022/11/10
- 18:52
蒼流庵易学講座の録画受講生で古書収集家のY氏が、講座で使用しているテキストを評して「準素読方式」という表現を使われたのは言い得て妙という気がした。
「素読」というのは江戸時代の漢文教育というか読書法の基礎であって、意味を取ることは全く考えずに、ただ原文をスラスラと読み上げられるように音読を繰り返すものである。
一頃流行った「声に出して読む〇〇」は、その安直なリバイバルであった。
素読は暗記を前提にしているのだが、これは自身が将来漢文や漢詩を実作するということを念頭に置いた読書法であり、文の構成を刷り込むことを主眼としている。
従って、漢文を実作しない我々普通の現代人には無用の読み方であるし、もし漢文を読もうとするならば、漢文の構成や特有の語法、品詞の排列法といった点を重視して読解する術を身につけるべきで、そもそも闇雲な暗記など根気を失った現代人には土台無理な話だろう。
ただし、易学の場合は、義理だけでなく占筮という側面がある為、出来れば暗記していることが望ましく、それには繰り返し読むこと以外に道はないので、なるべく薄いテキストを使用することが求められる。
矢鱈に詳しい解説がある本を有難がる人が居るけれど、参考書は分厚く、教科書は薄く、というのが勉学の基本であろう。
別段「準素読方式」などという意識で編纂したテキストではないのだが、結果として音読にも便利な体裁になっていて、我ながら中々の(もっと正直に言えば最高の)出来栄えと自負している。
このテキストも講座を勧めながら更に改定を進めていて、さながらサミュエルソンの経済学教科書のようになって来たが、次回開催するコースではさらにアップグレードしたものをお届けできる予定だ。
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