『朱花の恋 易学者・新井白蛾奇譚』三好昌子著
- 2022/12/07
- 18:20
『朱花の恋 易学者・新井白蛾奇譚』三好昌子著(集英社/2021年刊)
三好昌子著『朱花の恋 易学者・新井白蛾奇譚』はミステリー仕立てのファンタジーとでも形容すべき作品で、新井白蛾を主役にした初の小説と聞き、たしか新刊発売日に地元の書店で求めたと記憶している。
昨年11月の刊行であるから、ちょうど一年前になるようだ。
著者は2017年のデビュー以降、精力的に執筆活動を行っているようで、てっきり若手作家かと思い込んでいたのだが、今調べてみると還暦を過ぎたおばちゃんであるらしい。
私は普段歴史小説の類は殆ど読まない為、今回も新井白蛾に釣られて手に取ったに過ぎず、著者の作品も此の一冊のみしか読了していないのだが、易に対する興味を以て手にするにはそれほど楽しめる読み物ではないというのが読了後の率直な感想。
白蛾に特別な思い入れがあって取り組んだという訳ではないらしく、時代考証や人物の掘り下げ等に関しては殆ど頓着していないようで、それは参考文献として今日新井白蛾を語る上で欠く事の出来ない成果となった奈良場勝博士の研究が全く利用されていないことにも表れている。
しかし、そもそもエンターテインメント、ましてファンタジーノベルにそのようなものを期待して読むほうが間違いなのであって、単純に白蛾に何の興味もない読者(要するに著者が想定している読者)にウケるかどうかが大切なのだから、そういう点で客観的に眺めてみると、まずまず面白い作品には仕上がっているのではないかと思う。
此の調子で、真勢中州捕物帳や高島呑象怪奇譚などに取り組んで頂くのも結構かと思うが、残念ながら春に出た新作の主人公は足利時代の絵師・土佐光信(1434~1525)であるようで、易者は白蛾限りかもしれない。
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