“師走”は「師匠が走る」と書くが、先月はオンライン講座受講者諸氏の為の蓍策制作で夜なべ仕事が続いた。
座しての作業であるから走りはしないけれど、かつてない数をこなした為に随分忙しく働いた気がする。
蓍草(中国では是れにキク科ノコギリソウを当てているが、私は自身の考証により少なくとも占具として用いられたのはマメ科ハギ属のメドハギが正しいと考えているので、ここで云う蓍草はメドハギのこと）は採取そのものは、さして手間ではないのだが（ただし日当たりの良い場所を好むので、汗だくは覚悟）、其の後の加工に結構な労力を投入する必要がある。
特別な器用さこそ要求されないが、根気の必要な作業だ。
最初はそのまま持ち帰ってから作業していたが、ゴミがかなり出る為、葉をムシって適当な長さにカットするところまでは現地でやってしまうようになって数年が経つ。
持ち帰った後は、ガレージで2～3日天日干しにして乾かした後、筮竹と同じ長さに切りそろえ、余りに曲がっているものや細過ぎるものは処分する。
こんな単純作業も一本一本手作業だから、数が多くなると大変だ。
そして、お次は軍手をした指で、ムシった葉のあとを綺麗にならす。
始めは刃物でこそいでいたが、これだと疵になって仕上がりが非常に汚くなるからやめてしまった。
これも数をこなすと親指の爪がはがれそうになるので余り根を詰めないほうがいい。
ここまで終わったら輪ゴムで留めて半年ほど寝かせ、更に乾燥が進むのを待つ。
半年経ったら今度はロウソクの炎で蓍策のたわみを矯正して行く。
全工程中いちばん神経を使うのが此の作業で、加熱し過ぎると焦げてしまうし（軽微なものは爪でこすれば除去できるが、パチッと爆ぜてしまったものは中まで焦げてしまっている）、加熱が不十分だと力を加えた時にバキッと折れてしまう。
コツは蓍策を回転させながらやることで、これだと焦げずに十分熱を通せて、飴細工状とまではいかないが自在に形状を変化させられる。
最後は一本一本再び長さを揃える為に数ミリ～１cm程度カットして完成。
何故最後にもう一度裁断の工程があるのかと言えば、たわみを直した状態でないと長さを均一に揃えられない為である。
今年は初めて13セット作ってみた。
自宅に持ち帰ってからの作業は50本１セットで全工程2時間半ほどかかるので、やはり販売するとしたら筮竹並みの対価が欲しいところだが、オンライン講座の受講者諸氏には今のところ無料で進呈している。
恐らく見た目からでは作り手が要求される手間暇は全く伝わっていないと思うので、多少は有難がってもらえるように記事にしてみた。
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