医学の跡をたづねて①
- 2023/05/24
- 18:01
録画受講組のYさんが古書市で発掘されたという二冊の古アルバムを送ってくださったのは一月のことであるが、市でアルバムなど視界に入ったところで手に取ったことさえ無い自分はビブリオマニアの貪欲さ(?)にほとほと関心させられたし、一度も直接にはお会いしたことのない小生の如き者に、かかる心遣いを見せて下さるYさんの御人柄にもいつも感じ入っている。
都立荒川産院の院長だった外川清彦なる医師が、趣味でシコシコ貼り付けていたもののようである。
かつて東京には、台東産院、築地産院、墨田産院、荒川産院という4つの都立産院があったが、1980年代から順次統廃合されて、現在は一つも残っていない。
荒川産院は少子化や施設老朽化を理由に平成6年12月末に廃院となり、跡地には現在特別養護老人ホームが立っているという。
外川清彦という名前は医史学の分野では見たことがないが、ネット情報によれば戦時中は軍医として南方に従軍していた人のようである。
「医学の跡をたづねて」は、かつて武田薬品が出していた『実験治療』(2014年廃刊)に連載されたもので、執筆陣は中野操(1897~1986)や石原明(1924~1980)、阿知波五郎(1904~1983)等、かなり豪華な顔ぶれで頗る読み応えがある。
丁寧に目次も手書きで作成されており、すぐに目当ての記事を引くことが出来るようになっている。
昭和にはスクラップを趣味とする人がかなり居たが、外川医師も筋金入りのスクラップマニアだったようだ。
各々得意とする地域の専門家に執筆を依頼したらしいが、当時最適の人選が行われていて、それは内容の充実ぶりに反映されている。
記事を読むのが楽しいのは言うまでもないが、こういうレトロアイテムは裏面の記事が意外に楽しかったりする。
新番組として紹介されている「豹の眼」は、『少年倶楽部』に連載された伝記冒険小説を実写化したもので、1959年から翌年にかけて放映された。
『月光仮面』に続くタケダアワーの第2作で、20年ほど前にはDVD-BOXも発売されている。
Wikipediaで内容を読む限りでは、幼少期の想い出補正なしには、とても観られたものではなさそうだ。
殆ど毎号と言って良いくらい裏面に登場するのは、“密林の聖者”シュヴァイツァー(1875~1965)の記事で、我々には遠い昔の偉人であるが、当時はまだ存命のリアルな人物だった訳だ。
もう一冊のスクラップブックには、東洋医学関係の雑多な記事が色々貼り付けてある。
新聞記事はCiNiiにはヒットしないので、お宝ネタの宝庫だったりすることも多い。
我々には老人の姿でインプットされている昭和の大家達が未だ若々しく、昭和漢方復興期の熱気が伝わって来るようだ。
庵主も講読している日本医史学会関西支部発行「医譚」の誌友募集の記事。
今ではそれほど同人の多い会誌ではないのだが、外川医師も当時庵主と同じ関西支部のメンバーだったというのは、何やら感慨深いものがある。
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