『傷寒論今釈』陸淵雷編著
- 2014/08/30
- 10:40
『傷寒論今釈』陸淵雷編著
陸淵雷先生(1894~1955)は、中華民国の時代に主として上海で活躍した人で、中西医学結合を目指した中医学者の一人であるが、今回は主著の一つ『傷寒論今釈』を御紹介する。
日本では明治期に漢方医学が制度的に駆逐されたが、逆に中国では江戸時代の医学書を輸入するようになり、特に陰陽五行を否定する古方派の著作が、反って伝統医学の近代化に寄与するものとして有難がられたらしい。
陸淵雷先生もその気風の延長線上に居る学者であり、『漢方の臨床』第35巻4号に寄稿された「陸淵雷先生の日本漢方医学研究」(顧旭平著)によれば、『傷寒論今釈』中には日本の医家の論説を674回、『金匱要略今釈』では629回引用し、引用した日本の医書は四十家にわたっており、歴代の張仲景学説研究者で、これ程多くの国外文献を深く研究した者は陸先生以外にはなかったとしている。
陸先生の行き方は、単に日本の医書から大量に引用するというだけの陳腐なものでは勿論無く、種々の論説の中で肯定出来ないものに対しては異議を唱え、合理的な見解や臨床の実際に適合するものは積極的にこれを取り入れ、また、西洋医学の理論と結合させて解釈を深め、可能な限り自身の臨床治験によって確かめるという慎重な研究態度を堅持されている。
その姿勢にもまた見習うべきところが多いと思われる。
写真は2008年の学苑出版社版であるが、古い版を探せば簡体字でないものも入手出来るし、台湾版は現在でも新本で入手出来たかと思う。
スポンサーサイト