『黄帝医籍研究』真柳誠著
- 2015/02/24
- 20:34
『黄帝医籍研究』真柳誠著(汲古書院 /2014年刊)
昨秋、真柳誠先生の待望の単著『黄帝医籍研究』が上梓された。
真柳先生は、茨城大学で教鞭を執っておられ、医史学の大家として国外でも著名な方である。
医史学者としては、蒼流庵主人の最も尊敬する先生と言って良い。
先生は数多くの優れた業績を上げておられ、そのマエストロであらせられることは衆目の一致するところであるが、不思議なことに単行本としては『中国本草図録』の訳業くらいしかなかった。
そんな先生の待望の単著が、尋常一様なものであろうはずがない。
実は日曜の国際シンポジウムに参加した目的の一つは、この先生の御高著にサインを入れて頂くことにあった。
字が上手でないという理由で最初は渋っておられたが、最終的にはこちらが押し切る格好になり、悲願のサイン本が蒼流庵蔵書に加わることになったのは、実に嬉しい。
“黄帝医籍”というのは先生の造語で、『素問』『霊枢』だけでなく、それに関連したり、その発展的内容である『難経』や『明堂』『甲乙経』『太素』などを総称したものであり、各書は内容のみならず、成書や伝承・普及の経緯が相互に関連しているため、一括して考察しなければならないという先生の視野の広さから造られた用語である。
内容は、書誌学や考証学に関心の無い向きには相当にハードなものであろうが、不思議とスラスラ読めるのは、明晰極まりない文体で叙述されているからに違いない。
恐らく、今後黄帝医籍について如何なる発見があり、その発見や新知見が本書の内容に変更や訂正を迫るようなことになったとしても、この分野で本書を上回るような優れた書物は現れないだろうと私は思う。
品切れ絶版後の値上がりは確実なので、新刊で買える内に買っておかれるが宜しい。
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