ハカマイラーに与ふる書
- 2015/02/26
- 18:47
『京の医史跡探訪』杉立義一著(思文閣出版/1984年刊)
同著者の書物としては以前『医心方の伝来』を紹介したことがある。
書名通り、京都の医史跡が写真付きで懇切丁寧に紹介されており、読んでいるだけでも楽しい本だ。
最近は入手困難らしく、古書価も上がっているらしい。
『京都名家墳墓録』寺田貞次著(山本文華堂/1925年刊)
京都における掃苔には欠かせない本だ。
随分古い本なので、写真が掲載されていないのは残念であるが、碑文だけでなく、墓域における位置まで丁寧に記載されているから、探墓の手間が省ける。
見つからなければ、まず無縁墓域への移動か廃棄を考えて良かろう。
ローカルな医家や易儒を探すには実に重宝した。
入手困難本ではないのだが、1976年の復刊本も含めて、結構古書価が高く、赤貧にあえぐ蒼流庵主人は専ら近所の大学図書館の蔵本を利用している。
著者の寺田貞次(1883~1946)は小川琢治(1870~1941)の弟子筋らしい。
『京都名墓探訪』小川善明著(ナカニシヤ出版)
比較的新しい本としては『京都名墓探訪』が良いと思う。
寺田本のような古い調査記録ではないので、大抵は現存している。
紹介されている墓碑は、割に一般向けのものが多く、あまりガチなハカマイラー向けではない。
版が少し大きく、二巻に分かれているのが携帯には不便で、そこがマイナスだろう。
『大阪訪碑録』木村敬二郎著(浪速叢書刊行会/1929年刊)
『京都名家墳墓録』の大阪版のような内容であるが、墓碑の位置は記されていない。
その代わりに、墓拓の一部分が収載されており、在りし日の面影を知ることが出来る。
京都と違って、大阪は空襲を受けている上、戦後の無縁整理もかなり徹底して行われた感があり、収録墓碑の現存率は、『京都名家墳墓録』よりもずっと低い印象がある。
その点でも、本書は資料的価値が高い。
浪速叢書の一冊(第10巻)として刊行されたもので、1978年には名著出版から復刻されている。
今は、国会図書館の近代デジタルライブラリーで読むことが出来るので有難い。
著者の木村敬二郎(1861~??)は、通天閣の命名者・藤沢南岳(1842~1920)の門人で、掃苔を趣味とした好事家らしい。
『大阪墓碑人物事典』近松誉文著(東方出版/1995年刊)
だいたいは『大阪訪碑録』を下敷きにした本だろうが、訪碑録には収載されていない墓碑の情報も載っており、重箱の隅をつつくのに時折使用した。
『江戸・東京名墓碑ウォーク』 横山吉男著(東京新聞出版局/2002年刊)
東京での掃苔には専らこの本のお世話になった。
私が掃苔の対象にするようなローカルヒーローの墓碑に関しては写真が省かれているが、もっとも必要な墓銘の情報さえあれば取り敢えずは事足りる。
携帯にもさして不自由を感じないサイズであるのも嬉しい。
『国書人名辞典』(岩波書店/1993~1999年刊)
蒼流庵的ハカマイル最重要文献。
東京や京阪など纏まった掃苔録が刊行されている地域以外の情報はほとんど本書に依った。
また、事績の紹介もほとんど本書に依拠している。
私は易儒と漢方医を専門的に調べたが、或いは『論語』や『左伝』などの著作がある学者をテーマに探墓してみるのも面白かろう。
まだまだ、誰も取り組んでいないテーマは幾らでもあるはずだ。
上記の書物は、その際重要なものばかりである。
私の掃苔は完全に独学で、最初はこれらの書物の存在も知らなかったから、実に遠回りしたと思う。
先にこれらを押さえておけば、効率良くハカマイルが出来るはずだ。
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