『図説東洋医学〈基礎編〉』はやし浩司著
- 2015/03/17
- 18:43
『図説東洋医学<基礎編>』はやし浩司著
今日ご紹介する『図説東洋医学<基礎編>』は、鍼灸学校の学生でも大抵は知っている、そして恐らく持っている名著である。
僅かに250頁ほどの分量で、しかも大半は図説とあることから分るようにイラストで構成されているのだが、これほど東洋医学の基礎的理論を簡潔に解り易く纏めあげた本は恐らく他にない。
昨日は、全くの門外漢を対象にした本として、大塚恭男先生の『東洋医学』を取り上げたが、もう少し本格的に勉強してみたい人は本書を紐解かれるのが良いと思う。
基本的には内経系の医学理論が中心で、湯液家よりは鍼灸家向けの内容と言えば言えるが、これくらいの知識が頭に入っていないような湯液家の処方は怖くて飲めない。
そう思って良いくらい基本的な理論が簡潔に纏められている。
本の寿命が短く、大抵は第一刷が品切れになると同時に、古書価がいたずらに吊り上がるこの業界で、1979年の初版以来未だにロングセラーとなって出版社をニンマリさせている事実がこの本の良さを物語っていると言えよう。
なお、著者として山田光胤/代田文彦両氏の名前が記載されているが、これは無名氏の著作では売れないという大人の事情により、このような形で出版されたもので、真の著者は企画・構成としてクレジットされている、はやし浩司氏である。
これは氏にとって屈辱的な措置だったらしいが、私にも似たような経験があるので、氏の悔しさは痛いほどよくわかる(もっとも私の場合はもっと酷くて盗作の類なのだが)。
そこで、今回はあえて著者をはやし氏の名前にしてご紹介することにした。
氏は他にも同分野で『図説東洋医学<経穴編>』『目で見る漢方診断』を著されているが、どれも名著としてその筋ではよく知られている書物である。
『目で見る漢方診断』(1988)を最後に、氏は同分野から完全に足を洗ってしまわれたが、日本の出版業と読者にもう少し良識というものがあったなら、まだ幾冊もの名著が生まれたのかもしれない。
そう思うと残念である。
氏は、児童教育を本業にされているらしいが、その著作の簡潔で明晰なことは、あるいは氏が教育畑の人である為かもしれない。
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