『長倉漢方雑話』長倉音蔵著
- 2015/03/29
- 10:44
『長倉漢方雑話』長倉音蔵著(長倉製薬/1979年刊)
大阪の長倉製薬といえば、優れた漢方製剤メーカーとしてよく知られているが、創業者の長倉音蔵先生(1894~1973)は、知る人ぞ知る浅田流漢方の使い手でもあった。
正規の教育を受けておられないので、ついに表の世界で評価を受けられることはなかったが、7回忌に出版された『長倉漢方雑話』は、その薬方運用を窺い知るための貴重な資料である。
漢方医学の基礎的な解説も書かれているが、加減合方の実際の運用など、中級者以上に役立つ記述が多い。
個人的には巻末に附された遺稿「従来の選品法について」「生薬今昔ばなし」が一番面白かった。
長倉製薬の製品にはあまりご縁が無いのか、私は未だに使う機会を持てずにいるのだが、抗癌漢方として知られるWTTC、九檳呉茯(九味檳榔湯加呉茱萸茯苓)など、長倉製薬しか製造していない気になる処方がいくつもある。
なお、紀藤先生が発行されていた『実占研究』の昭和30年代の巻号で、「実性と虚性」と題して長倉先生の漢方講座が3回連載されたことがある。
東洋医学に強い関心を持っておられた紀藤先生の求めに応じて寄稿されたものと思うが、ご自身も易学に関心を持っておられたところもあったのだろうか。
スポンサーサイト