怪しい漢方製剤
- 2015/05/29
- 20:05
エキス製剤は成分が均一だから安心して使えるという人がいる。
確かにそういう一面もあるには違いない。
しかし、『漢方製剤の偽装』や『漢方の主張』を読めば、「力価」の観点から承服しかねる製剤が少なくないという現実を知ることになろう。
以前親しくしていた或る漢方薬剤師は「メーカーによるエキス製剤の品質格差はほとんどないと思っている」と何のためらいもなくのたまったが、このような発言は自らの不勉強を吐露したものでしかない。
各メーカーの製品を見てみると、まず目につくのは構成生薬の含有比率がマチマチであるという点で、これ自体は煎じ薬のように微妙な加減が出来ないエキス剤にとって、使い分けの便宜もある訳だが、奇妙なのは構成生薬そのものに異同が見られる点である。
たとえば、五苓散中の白朮と蒼朮について見てみよう。
ツムラと一元製薬は蒼朮を用いており、小太郎、東洋薬行、三和生薬、松浦漢方、クラシエは白朮を用いている。
白朮と蒼朮については、キク科オケラの若芽を白朮、古芽を蒼朮とする説もあるが、それぞれ全く別の植物を当てるのが一般的だ。
作用としては、どちらも似てはいるものの、汗については白朮に止汗作用が強く、蒼朮に発汗作用があると中医学の本には書いてある。
張仲景の時代には、白と蒼の区別はどうも無かったらしく、古い文献には単に「朮」の一字で書かれているのだが、宋板傷寒論が編まれた頃には、既に朮には白と蒼の区別が出来ており、紛らわしいので、林億ら宋臣は、仲景の言う朮は現在(宋)の白朮であると考え、表記を白朮に統一したとされる。
どちらにせよ、同じ方剤に白朮が使われていたり、蒼朮が使われていたりするのは面白いことだ。
今度は、十味敗毒湯を見てみよう。
本方は、華岡青洲によって作られたもので、柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・桜皮・生姜・独活・ケイ芥・甘草の十味で構成されているのだが、問題はこの中の「桜皮」である。
その昔、本来は桜の皮を用いるところを、浅田宗伯が、撲ソク(クヌギの皮)に変えてしまった為、青洲の意図した方剤とは違ったものになってしまった。
たった一味ごときとも思うが、花粉症などにはクヌギを使った十味敗毒湯は効果がないという。
メーカー別に見てみると、東洋薬行、一元製薬、松浦漢方、クラシエ、小太郎、三和生薬は桜皮を使っているが、ツムラはクヌギだ。
なお、愛用のソフト新・東洋医学辞書で変換すると、クヌギを使った方が出てくるのは残念(新しいバージョンでは改善されているのだろうか?)。
辞書と雖も、鵜呑みにするのは危険であると教えられるが、この問題についてはまたの機会に詳しく論じてみたい。
確かにそういう一面もあるには違いない。
しかし、『漢方製剤の偽装』や『漢方の主張』を読めば、「力価」の観点から承服しかねる製剤が少なくないという現実を知ることになろう。
以前親しくしていた或る漢方薬剤師は「メーカーによるエキス製剤の品質格差はほとんどないと思っている」と何のためらいもなくのたまったが、このような発言は自らの不勉強を吐露したものでしかない。
各メーカーの製品を見てみると、まず目につくのは構成生薬の含有比率がマチマチであるという点で、これ自体は煎じ薬のように微妙な加減が出来ないエキス剤にとって、使い分けの便宜もある訳だが、奇妙なのは構成生薬そのものに異同が見られる点である。
たとえば、五苓散中の白朮と蒼朮について見てみよう。
ツムラと一元製薬は蒼朮を用いており、小太郎、東洋薬行、三和生薬、松浦漢方、クラシエは白朮を用いている。
白朮と蒼朮については、キク科オケラの若芽を白朮、古芽を蒼朮とする説もあるが、それぞれ全く別の植物を当てるのが一般的だ。
作用としては、どちらも似てはいるものの、汗については白朮に止汗作用が強く、蒼朮に発汗作用があると中医学の本には書いてある。
張仲景の時代には、白と蒼の区別はどうも無かったらしく、古い文献には単に「朮」の一字で書かれているのだが、宋板傷寒論が編まれた頃には、既に朮には白と蒼の区別が出来ており、紛らわしいので、林億ら宋臣は、仲景の言う朮は現在(宋)の白朮であると考え、表記を白朮に統一したとされる。
どちらにせよ、同じ方剤に白朮が使われていたり、蒼朮が使われていたりするのは面白いことだ。
今度は、十味敗毒湯を見てみよう。
本方は、華岡青洲によって作られたもので、柴胡・桔梗・川芎・防風・茯苓・桜皮・生姜・独活・ケイ芥・甘草の十味で構成されているのだが、問題はこの中の「桜皮」である。
その昔、本来は桜の皮を用いるところを、浅田宗伯が、撲ソク(クヌギの皮)に変えてしまった為、青洲の意図した方剤とは違ったものになってしまった。
たった一味ごときとも思うが、花粉症などにはクヌギを使った十味敗毒湯は効果がないという。
メーカー別に見てみると、東洋薬行、一元製薬、松浦漢方、クラシエ、小太郎、三和生薬は桜皮を使っているが、ツムラはクヌギだ。
なお、愛用のソフト新・東洋医学辞書で変換すると、クヌギを使った方が出てくるのは残念(新しいバージョンでは改善されているのだろうか?)。
辞書と雖も、鵜呑みにするのは危険であると教えられるが、この問題についてはまたの機会に詳しく論じてみたい。
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