『張仲景研究集成』錢超塵・溫長路主編
- 2015/06/21
- 20:54
『張仲景研究集成』 錢超塵・溫長路主編(中醫古籍出版社/2004年刊)
『おけら』11号への寄稿文を書くに際して参考にした書物がいくつかあるのだが、その内の一冊が今日ご紹介する『張仲景研究集成』だ。
本書は2004年に中醫古籍出版社から上梓されたもので、上下巻合わせて2300頁を超え、国内外から精選された収載論文は1000篇近くに上る。
臨床に関わる論考が多いが、私が今回の執筆に当たって参照したのは、主に仲景その人について考証した論文である。
『傷寒論』の自序と宋板に林億らが附した序文では、仲景が南陽の人で長沙の太守であったことと、同郷の張伯祖より医伝を受けたこと、そして一族の大半を傷寒で失ったことが医書執筆の動機である、といったことが書かれているが、同時代の正史に張仲景の名は見えず、実在の人物であるのかどうかさえ疑う人も居る。
以前、真柳先生にこの問題についてお伺いしたことがあるが、「一族の大半を傷寒で失ったことが執筆の動機であるのは本当と見て良いと思うが、長沙の太守であったというのは疑わしい」というのが先生の御見解であった。
私は今回の寄稿文の中で、「張機の“機”は当に“羨”に作るべし」とする清末の孫鼎宜の説を紹介したが、この説を含め、日本にはほとんど紹介されていない仲景に関する事跡考の主要な論文はこの『張仲景研究集成』に盡く収められていると言って良い。
少々値が張るが、経方家は手元に置いておきたい本だ。
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