追悼・広瀬宏道先生
- 2015/07/07
- 21:16
孤高の易学家・広瀬宏道先生が5月に91歳で長逝されていたことを知ったのはつい先週のことで、御遺族から届いた一枚の御葉書によってであった。
私は先生の最晩年に僅かに接した程度に過ぎず、其の山の如き学徳を語るのは僭越至極であるのだが、平成の御代まで存命であった易学家で、学術両面で最も高い境地を其の身に体現されたのが広瀬先生であったことを、私は疑わない。
先生の訃報に接して以来、久しぶりに「易経闚観」「六十四卦妄説」「易経冗舌」「易経研究」といった連載を読み返しているのだが、“最後の巨星”と呼ぶに相応しい先生を失った斯界の損失があまりに大きいことを痛感している。
先生は随分変わった人で、実占研究会の解散以降、少数の講演依頼に応えられたのを除いて、斯界での人付き合いをほぼ完全に絶っておられた。
かつての実占研究会のメンバーも紀藤先生が亡くなられた昭和56年以降、紀藤先生の令夫人の葬儀を除いて、姿を見た記憶がないという。
それも既に十数年の昔であるというから、私は先生の最晩年を直接に知る恐らくは唯一の易学関係者になると思われる。
先生は大変に本が御好きであった。
置き場が無くなると定期的に処分しておられたようだが、90年という長き時を生きてさえ、最期までその向学心は衰えることがなかったようだ。
先生の明晰この上ない頭脳は、そのたゆまぬ精進によって維持されていたのだろう。
最も尊敬されていたのが、無限精進の人・公田連太郎先生であったことをフト思い出したが、学びに終わりがないということを先生は其の身を以て示された。
先生の博学宏識には遠く及ばないが、私も生ある限り、精進を続ける人間でありたいと思う。
広瀬先生、どうぞ安らかにお眠りください。
合掌…
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