『新漢和中辞典』長澤規矩也編
- 2015/08/18
- 18:40
『新漢和中辞典』長澤規矩也編(三省堂/1967年初版)
漢方だろうと易学だろうと、漢文で書かれた古典を勉強しようとする時に、真っ先に必要になって来るのが、漢和辞典である。
漢和辞典に限らず、辞書辞典の類は、どのような学習分野においても必要欠くべからざるものであるが、初学者の眼にはどれも似たようなものにしか映らないから、その選択は中々に困難を伴う。
そこで、いくつか私が普段用いている辞書をご紹介したい。
私が一番よく利用している漢和辞典は、三省堂の『新漢和中辞典』だ。
編者の長澤規矩也(1902~1980)は、“孤高の漢学者”として知られた書誌学の大家で、1937年の『新撰漢和辞典』以後、数冊の漢和辞典を編纂しており、三省堂から上梓されたこれらの辞書群は俗に“長澤漢和”と呼ばれている。
これらの長澤漢和の中で、ひそかな、しかし根強い人気を集めているのが、1967年に初版が刊行された『新漢和中辞典』だ。
私はこの辞書の存在を谷沢永一氏(1929~2011)の本で知ったのではないかと思うが、記憶が曖昧で定かではない。
既に絶版で、聞いた話では編者の後妻が版元と印税を巡ってトラブルを起こし、「うぜぇ」と思った三省堂が絶版にしたものという。
同書の存在を知った時には、既に新本では購入出来なくなっていたが、幸い安価な古書を入手することに成功して、以後、座右に置いていた。
その後、春光苑漢方研修会に入門して、漢方を勉強するようになったが、苑主・粟島行春先生は、『傷寒論』中の文字を読解するのに最も適した辞書として『新漢和中辞典』を推奨しておられ、会内にこの辞書を欲しがっている人が大勢居ることを知った。
一冊二冊と希望する人に御分けしているうち、気付けば20冊以上を購入していたが、研修会の解散以後は、古書店で見かけても手に取ることは無くなってしまった。
久しぶりに調べてみると、今は当時よりも古書価が下がって(というかタダ同然の値段)、入手は随分容易になったようだ。
携帯版『新漢和中辞典』(1969年初版)
初版刊行から2年後に出た携帯版で、春光苑漢方研修会では、こちらの版を持参している人が何人か居た。
私は荷物を重くしたくないので、研修会に持って行くことはなかったが、今も親しくして頂いている東京の先生の愛用書は、まさに葦編三絶の見本のような状態であった。
豪華愛蔵版『新漢和中辞典』(1976年刊)
三省堂の他の有名辞典と合わせて、1976年に制作されたのが写真の版で、“豪華愛蔵版”の名に相応しいゴージャスな作りではあるものの、デカイわ重いわ、使用不可能な代物である。
完全なコレクターズ・アイテムで、蒼流庵蔵書の中でも持て余し気味の一冊だ。
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