『例解古語辞典』
- 2015/09/23
- 21:41
『例解古語辞典』(三省堂/1980年初版)
私のように中国の古典を勉強している人間の場合、用語集のようなものを除けば辞書といっても漢和辞典の出番が99%であると言ってよいのだが、あれこれと字引をご紹介して来たついでに日本の古語辞典にもご登場願おうと思う。
昔の医療の実際を知る為に、直接医学とは関わりの無い書物に眼を通す必要に迫られることもあろうし、占いの分野でも民衆を描いた些細なワンシーンに当時を理解するためのヒントが隠されているというようなこともあろう。
手元には、大野晋(1919~2008)の『岩波古語辞典』(1974年初版)や小西甚一(1915~2007)の『基本古語辞典』(1966年初版)など、それぞれに優れた古語辞典があるが、大野辞典はコトバの原義を説明しようとするところに特色があって誰彼なく薦められるものではない気もするし、最近ようやく復刻された小西辞典は稀代の碩学が一から手掛けた伝説の古語辞典であるが、ポケット版なので語彙数はそんなに多くないし、個人的にどうも小さい辞書というのは物理的な引き辛さがネックになる。
そんな訳で、月並みではあるけれど、今でもロングセラーとして多くの高校生が使っている三省堂の『例解古語辞典』に落ち着いた。
この辞書は、従来の古語辞典が用例を語義の実例としてあげるのに対し、むしろ選び抜かれた用例によってコトバの意味や使い方を的確に把握出来るよう工夫を凝らした点に特色がある。
古本屋の100円均一棚でもよく見かける辞書であるし、古語辞典も揃えて書棚にさらなる安心感を与えたいという向きには、とりあえずオススメ出来る本だ。
なお、なにかと三省堂の辞書を取り上げてきたが、私は国語辞典も見坊豪紀(1914~1992)の『三省堂国語辞典』(1960年初版)を使っていたりする。
別に三省堂の回し者ではないのだが、やはり辞書の三省堂というだけあって、優れたものを多く出している事実は誰しも認めざるを得ないだろう。
書棚にある辞書の水準からあるじの学問的程度を推し量る人も居て、またこれが案外精度の高いスケールだったりもするので、それなりに出来る人間を書庫に入れる際には、つまらぬ辞書を晒して馬鹿にされないよう、こういう武装も怠ってはならない。
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