『四書五経入門』竹内照夫著
- 2015/11/08
- 20:21
『四書五経入門』竹内照夫著(平凡社/1965年初版)
昨今、漢方や易学を学ぶ人々の中国史に対する無関心には驚かされるが、同様に四書五経など漢学の基礎となる文献についてもほとんど無知といって良い状態のようだ。
四書五経とは、孔子が選定した「易・書・詩・礼・春秋」の五経と朱子が重視した「論語・孟子・大学・中庸」の四書とを合わせた総称で、中国の古典を理解するにはこれらの知識もある程度持ち合わせていないと中々難しいところがあろう。
一昔前はこれらが一般教養のベースになっていたから、江戸時代の医書等にもかかる漢籍からの引用が端々に見られ、一々出典など断わっていない場合がほとんど故、意味を取るのに現代の学習者は苦労させられることが屡々ある。
苟も漢籍に取り組もうとする者なら四書五経の知識くらいは持っていなくてはと思うのだが、周囲を見渡すと此の九つの書名すら挙げられない人がほとんどであるのは実に嘆かわしい。
もちろん全てに目を通すなどということは京大で支那学をやっている専門家でもそうそうしているはずはないから、我々には到底出来っこないし、そこまでする必要もなかろう。
しかし、せめてあらまし位は知っているべきだ。
そこで、今日は手軽な入門書として、『四書五経入門』(竹内照夫著)をご紹介しようと思う。
著者の竹内照夫先生(1910~1982)は、関西大や北海道大で教鞭を取られた中国哲学の専門家で、かつては紀藤元之介先生主催の実占研究会にも在籍されて、時折『実占研究』誌上にも寄稿されていた。
本書は、竹内先生の著述の中でも最もよく読まれたもので、はじめ『四書五経 中国思想の形成と展開』として東洋文庫(1965年)に収められ、2000年には『四書五経入門』として平凡社ライブラリーの一冊として装いを新たにしたものである。
わずか400頁に満たないものであるから、四書五経の表面をなぞる程度の内容に過ぎないと言えば言えるが、文章は平明で分かりやすいし、入門書としては目下最適のものであろう。
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