「中国古典をいかに読むか」吉川幸次郎座談
- 2015/11/10
- 18:26
『古典への道』吉川幸次郎対談集(朝日新聞社/1969年刊)
先に四書五経の優れた概説として竹内照夫博士の『四書五経入門』をご紹介したが、この本は記述の平明さといい値段の手頃さといい入門書としては申し分ないものの、どうも捻りが少なくて再読を思い立たせるほどの魅力には乏しい。
そこで、入門書として紹介するのは不適切ながら、同じ分野で捻りの効いた「中国古典をいかに読むか」を取り上げてみたいと思う。
朝日新聞社が1960年代に出版した「新訂中国古典選」シリーズの別巻『古典への道』に収載されている一篇である。
本書は、シリーズの監修者で京都学派の中心人物の一人でもあった吉川幸次郎(1904~1980)が行った対談を収めたもので、対談相手は井上靖(1907~1991)、中野重治(1902~1979)のような文学者から果ては湯川秀樹(1907~1981)に至るまで、驚くばかりの豪華な顔ぶれだ。
といっても、これらの対談は多くは冗長さが勝ってあまり面白くなく、正直読み通すにはそれなりの忍耐を強いられる。
しかし、巻末の「中国古典をいかに読むか」は、難解極まりない経書研究の歴史を簡潔に紹介していて一読に値するものと言えよう。
もとより対談集であるから竹内本のようなバランスの良さはないが、生真面目で地味な竹内本と比べて、吉川の老獪で巧みな話術が本書をなかなか味わい深いものにしているようだ(学者同士のぺダンチックなやり取りが嫌いな人には嫌らしさが鼻について不快かもしれないけれど)。
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