2011年の民政移管以降初となったミャンマー総選挙で、アウン・サン・スーチー女史率いる最大野党・国民民主連盟(NLD)が単独過半数を獲得して政権交代が確実な情勢となり、加えてスーチー御大も最大都市ヤンゴン郊外の下院選挙区で再選を果たしたとの発表があった。
蒼流庵主人はスーチーさんの支持者である。
支持者と言って語弊があるなら、ファンと言い換えても良い。
「頑なな態度でいたずらに国政を混乱させているだけ」という辛辣な評価も見聞きするが、あの見るからに融通の利かなそうな頑なさがまた良い味を出しているではないか。
加えて、御尊顔を凝視し続けていると、フト、いしだあゆみさんに見える瞬間があるという点もまた気に入っているのである。
そんないしだあゆみさん似の(それとも、いしだあゆみさんがスーチーさん似なのか?まぁそんなことはこの際どうでも宜しいが)スーチーさんの祖国・ミャンマーでいよいよ政権交代が起ろうとしている。
憲法の規定により子供が外国籍のスーチーさんには大統領になる資格がないらしいが、誰が大統領になったとしても党首たるスーチーさんが決定権を持つのは確実だろう。
従って、これからスーチーさんがミャンマーという国の舵取りをして行くことになる訳だ。
これは熱烈なスーチーファンである蒼流庵主人にとって非常に興味深い占題を提供してくれる事件である。
試みに、ミャンマー国政の今後を六変筮で占して、火水未済之雷地豫を得た。
我が『易経講話抄』を参照しながら、読卦を行ってみよう。
未済は既済の反対であり、物事が未だ成就しない場合に處する道を説く。
六爻は皆位が正しくなく、これは、即ち物事が悉く未だ成就して居ない形で、今占題に照らして考えれば、長らく軍事政権が続き、経済や民族など様々な点で難題の山積する現状が未済であるとも言えよう。
未済は、甚だしく爻の位置が宜しくないのであるが、上下の爻が全て相応じて居るという美点があり、上下皆共同一致して難局に当り、中庸の徳を以って事を処理する時は、如何なる難局をも打開することが出来ると教えている。
未済の卦は、既済の卦に反して、之を処置する仕方が宜しきを得れば、後にはどんなにでも好い結果を引き起こす事が出来るのであり、初めには乱れて終りには治まるの意を持っている。
しかし、処置の仕方が宜しきを得ない場合はその逆となること論を俟たない。
未済において特に重要なのは六五の爻で、全て未だ完成していない時代においては、剛強厳烈に事を処理してはうまく行かず、反ってますます混乱するようになるもので、柔順にして物やわらかに、事を処理して行くべきである。
これに因って、此の卦が後に発展して、伸び栄えて行くのである。
卦辞にある「小狐」は幼少なる狐であり、まだ十分に成長しない狐で、成長した狐と違って、幼少なる狐は、まだ色々な経験を持って居ないので、自ら戒めて慎重にせず、軽々しく進んで水を渡ろうとする為、尾が水に濡れないように、尾を高く挙げて水を渡るのであるが、途中でやや深い處に至り、体力が乏しいので、尾を高く挙げる力が無くなり、終に尾を垂れて水に濡らし、水を渡ることが出来ないのであり、未済の時に軽々しく、物事を処置してはならないことを卦辞は説いている。
この小狐は政権運営能力が未知数のスーチーさんともNLDとも見ることが出来よう。
くれぐれも勢いに乗じた軽率な行動を慎んでもらいたいものだ。
幸い、之卦は雷地豫で喜びの卦であるから、ミャンマーの国政の今後はそう暗くはないようである。
雷地豫は龍が地上に現れ出でた卦で、乾為天初爻の潜龍が力をつけて地上に奮い出た象とも見ることが出来るが、これもまた現在のミャンマーに合致した得卦と言えるだろう。
之卦にまずまずの吉卦を得ているので、我らが民主党の如くあれよあれよという間に転落(しかも国益を大いに損ねながら)して行くという愚は犯すまい。
気になるのは之卦雷地豫の主爻(スーチーさんともNLDとも)の爻卦に坎を配している点で、雷地豫の主爻は互坎の主爻でもある。
これは政党そのものに大きな問題を抱えているか、坎には病気の意味もあるのでスーチーさんの健康に何か問題が生じる可能性も考えられなくはない。
そこで、三変筮にて「一定の成果を挙げるまでスーチーさんは第一線で活躍出来るか」を問いかけた。
得られたのは、水沢節の上爻で、得爻がまたもや坎卦にかかっているのが面白い。
卦辞には「苦節は貞にすべからず」とあり、得爻の辞には「苦節なり。貞なるも凶」とあって、これはやはり病気などではなく、人の話に耳を傾けないスーチーさんの十八番の頑なさが不安要因となることを指したものと見て良いだろう。
ここで、ふと思い立って、最近ご無沙汰だった四象筮(※後日詳しく紹介予定)でも観てみることにした。
本之卦の展開は、先の中筮と似たような流れになっていて、麻野先生言うところの「卦象の妙」を見せつけてくれる。
明夷は、明らかなるものが傷つき害われる卦で、太陽が地の下に入って地上が真っ暗になった状態であり、これも亦これまでのミャンマーの状況を良く表現した得卦であろう。
之卦の兌為沢は少しニュアンスの違いこそあれ先の雷地豫と同じく喜びの卦であって、共に之卦に喜びの卦を得ているのは面白くもあり、ミャンマーの行く末の明るさを感じさせて中々に気分が良い。
彖伝には、「剛は中にして柔は外なり。説びてもって貞しきに利し。是をもって天に順いて人に応ず。説びてもって民に先だてば、民、其の労を忘る。説びてもって難を犯せば、民、其の死を忘る。説びの大なる、民勧むかな。」とある。
内は剛強誠実にして、外は和らぎ悦ぶという「剛中而柔外」の五字は最も重要なる文字で、唯だ口先ばかりで和悦するのは駄目であるし、内は剛強で正しくとも、外面があまりに厳酷に過ぎても駄目なのである。
自分も悦び、他人も悦び、そうして正しい道を固く守って居るので、大いに伸び栄え、事が順調に運んで行くのであり、そこで、天の道に順い叶うのであって、人民の心にぴったりと一致する訳だ。
君たる者が自分も悦び人民も悦ぶところの道を以って、人民に先立ち、人民を率いて事を行う時は、人民は皆自分の労苦を忘れて、君の命令に従って労苦の事を行うのである。
君たる者が自分も悦び人も悦ぶところの道を以って、人民を率いて国難を犯して進む時は、人民は皆自分の生命を失うことを顧みず、悦んで国難を犯して進むのである。
政権交代が確実となった今、あとはこれから国を率いていく御大が十八番の頑な力を封印し外を柔にして、様々な声に耳を傾け、粘り強く対話を続けながら、民族融和を図っていって欲しいと思う。
スーチーさんと祖国ミャンマーに幸いあれ!
スポンサーサイト