『諸子百家』貝塚茂樹著
- 2015/11/20
- 19:47
『諸子百家』貝塚茂樹著(岩波書店/1961年刊)
戦国時代は、中国の悠久の歴史の中でも思想史上最も多様性に満ちた時代で、僅か二世紀半ほどの間に、老子・荘子・墨子・孟子・荀子・韓非子といった今日でもその名が知られる独創的な思想家を大勢輩出した。
これは、周王朝が衰退して春秋戦国の時代に入ると、それまで特殊な階級のみが世襲的に独占してきた様々な知識や技術が広く開放されるようになり、また個人の自由な思索が広く行われるようになった結果、多くの学説が競い興ったのである。
これらの諸学は、始皇帝の焚書を蒙って多くは衰退し、その後再び盛り返したものは少ない。
したがって、多くは今日の我々には思想史の上から眺めるだけのものであるが、それぞれ個性が強くて中々に魅力的なところがある。
私たちは多く漢代以後の学問を扱うが、先秦の学問の様相を知っておくのも決して損ではなかろうし、或る程度までは一般教養の範疇でもあると思う。
そこで、戦国諸子の入門書として、岩波新書に入っている『諸子百家』(貝塚茂樹著)をご紹介する次第。
著者の貝塚茂樹先生(1904~1987)は、あの湯川秀樹(1907~1981)の実兄で、甲骨文字の研究で知られた。
本書は僅か二百頁に満たない小著で、取り上げられた諸子もほんの一握りの有名どころに止まり、その紹介もまた表面をなぞる程度だが、文章は平明達意であるし、新書としてはよく纏められた良著だと思う。
スポンサーサイト