『中国哲学史』狩野直喜著
- 2015/11/23
- 18:58
『中国哲学史』狩野直喜著(岩波書店/1953年刊)
中国の思想史に取り組む際、まず座右に置くべきは、狩野直喜(1868~1947)の『中国哲学史』だろう。
著者は、内藤湖南(1866~1934)や桑原隲蔵(1871~1931)らと共に京都支那学の黄金期を築いた碩学だが、奔放な学風の内藤湖南などと比べて文献学を重んじる堅実でやや地味なスタイルの為、今日ではそれほど人気が無いようだ。
文庫化された著作は無いし、現在新本で入手出来るのも、みすず書房の『御進講録』(1984年初版)と『春秋研究』(1994年初版)くらいで、内藤湖南や桑原隲蔵のように個人全集が編まれることもなかった。
『中国哲学史』は、著者が京大の哲学科で行った講義の草稿と学生のノートを整理編集したもので、内容は明治~大正時代のものであるから、今日から見て古くなっている部分もあるにせよ、微に入り細を穿つ緻密な学風が遺憾なく発揮されており、今日でも最も優れた中国思想史の解説書と言って過言ではなかろう。
本書は、それぞれの学者についての解説が充実しているが、初学者がいきなり取り組むには聊かハードルが高すぎる。
まずは、思想史の流れを大まかに掴んた後、細部を詳しく知るために利用するのが良いと思う。
庵主も通読は一度しただけで、後は辞書的な利用の仕方をしている。
大きな書物だが、著者の本の中でも最もよく読まれた名著なので、古本でも安価でよく見かけるし、版元ではオンデマンド出版もしているようだ。
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