『儒教史』戸川芳郎他著
- 2015/11/26
- 18:17
世界宗教史叢書10『儒教史』戸川芳郎他著(山川出版社/1987年刊)
土台、庵主は中国思想史に関しては門外漢なので、さして多くの書物に目を通している訳ではないのだが、狩野『中国哲学史』を御紹介したついでに、比較的新しめの類書も取り上げておくことにする。
今日ご紹介する『儒教史』は、山川出版社の「世界宗教史叢書」というシリーズの第10巻に収められているものだが、全12巻のこの叢書は、本書を残してすでに1983年に刊行を終えていて、本書だけが著しい遅延を見たのは、当初執筆を担当した西順蔵(1914~1984)、赤塚忠(1913~1983)の二氏が執筆半ばで相次いで逝去されるという事態に見舞われた為だ。
どちらもまとまった草稿が残されていなかった為、戸川芳郎(1931~)、蜂屋邦夫(1938~)、溝口雄三(1932~2010)の三氏を新たな執筆陣として仕切り直されたらしい。
序章の「儒教をどうみるか」は、いやに読み難くて閉口し、投げ出しそうになったが、あとはサクサク読むことが出来た。
『中国哲学史』はサクサク読めないので、読書時のストレスは随分少ない。
鄭玄の伝記はまとまったものを読んだことが無かった為、三代にわたって道義と忠節をまもる硬骨の士であったことを私は本書で初めて知ったし、朱子がこんなに頑で融通の利かない人物だったというのも知らなかった。
一番印象的だったのは、朱子学と陽明学の相違点を論じた第7~8章で、それぞれの担い手の違いを説いたくだりに一番関心させられるところがあった。
勿論、これは単に庵主の浅学ゆえのことで、斯界ではごく常識的なことなのかもしれぬ。
何はともあれ、自らの蒙を啓いてくれる書物を読むことほど楽しいことはない。
ただ、本書にはおかしなルビの振り方が散見される点が気になった。
刊行を急ぐあまり、編集者が杜撰な仕事をした結果なのだろうか。
また、蓍を「メドハギの茎」と断定的に解説してある点も、易学の専門家として面白くなかったことを書き添えておきたい。
スポンサーサイト