『先哲の学問』内藤湖南著
- 2016/01/21
- 18:08
『先哲の学問』内藤湖南著(筑摩叢書/1987年刊)
内藤湖南の本では、『先哲の学問』が一番好きだ。
本書は、我が国近世の先哲を顕彰する為に行われた講演の記録に湖南生前のメモを参考として一冊に編まれたもので、戦後間もない1946年5月、弘文堂書房より初版が上梓された。
1987年には筑摩叢書に入り、2012年にはちくま学芸文庫に収められて再び読書人の前に姿を現す。
まだ、絶版にも品切れにもなっておらず、新本で購入できるようだ。
山崎闇斎、新井白石、慈雲飲光、富永仲基、中井履軒、山片蟠桃ら十人の先哲の学問・思想が湖南一流の蘊蓄と共に縦横無尽に語られ、口演ゆえのくだくだしさも感じられはするが、視点の斬新、展開の自在、共に今読んでもほとほと感心させられるところがある。
山崎闇斎に優れた校勘学者としての顔があることを見、新井白石に非凡な対人スキルを見出し、富永仲基の加上説が決して仏教を排撃するためのものではなく、仏教を題材に用いた極めて独創的な思想史研究の方法であることを喝破する。
こういう透徹な眼差しを持ち、難しい内容を平易に語ることの出来る歴史家は既に絶えて久しい。
嗚呼!
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