『老子原始』『老子の研究』武内義雄著
- 2016/02/10
- 20:45
『武内義雄全集』第五巻(角川書店/1978年刊)
京都支那学の真の嫡流と言って差し支えないのは、恐らく武内義雄(1886~1966)であろう。
実際、内藤湖南も狩野直喜も、自身の学問上の後継者と考えていたフシがある。
そして、その学風も又、狩野から受け継いだ清朝考証学的な訓詁校勘の学と内藤から受け継いだ実証主義を駆使するもので、後輩に当たる宮崎市定などと比べても、より京都支那学黄金期の学問を王道路線で継承していると言えよう。
明治19年に三重の四日市で生まれ、京大に学んだ後、大阪府立図書館に勤務、懐徳堂講師となり、やがて東北大教授として仙台に赴任、昭和17年に帝国学士院会員となった。
退官後は、東宮職御用掛や名古屋大学文学部講師を務め、昭和35年には文化功労者として表彰された。
武内義雄と言えば、何といってもその最も著名な業績は一紀元を画した老子の研究であろう。
今では岩波文庫の『老子』は蜂屋邦夫の新訳で世に行われているけれど、それ以前の岩波老子は武内の訳注(昭和13年初版)であった(今は金谷治訳の岩波論語もかつては武内訳であった)。
武内のガチな老子研究は、かつて角川書店から刊行された全集の第五巻に二大著述と言っていい『老子原始』と『老子の研究』が収められている(この全集は全10巻から成るが、第一回の配本は第一巻ではなく、老子の研究を収めた第五巻からであったという辺りからも、この分野の武内学を代表していることが窺われる)。
この厳密極まりない文献学的研究は、私如きの学力では到底味わい尽くせぬが、京都支那学に触れたついでに、老子に関心を持つ方の為にも簡単にご紹介だけしておきたく思った次第。
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