『随園食単』袁枚著
- 2016/02/16
- 18:22
『随園食単』袁枚著(岩波文庫/1980年初版)
青木正児(1887~1964)の手がけた書物の内、最も多くの人に読まれたのは、袁枚(1716~1797)の『随園食単』の訳業であろう。
著者の袁枚は清代の大詩人で、食通としても名高い。
24歳で進士に及第した秀才であるが、若くして官を退き、江寧(南京)に買った廃園のある邸宅を「随園」と名づけて隠棲、自らの料理人に他家の料理を学ばせて美食を楽しみながら、書を読み詩を書いて生涯を送った人である。
生まれた家は大層貧しかったが、詩人として名を馳せてからは、売文による収入(一篇の墓誌に銀万金を贈る者さえあったという)が尋常ではなかったらしく、豪奢な生活はその金で維持されていた。
『随園食単』は、料理の作り方を記した書物で、随所に著者の食通ぶりが発揮されており、少し毛色は違うが、ブリア=サヴァラン(1755~1826)の『美味礼讃』(同じく岩波文庫所収)と東西の双璧を成すと言われる。
私は昨今流行りの薬膳なるものにはさして興味を持たないが、その分野に関心のある人にも何か得るところのある書物やもしれぬ。
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