神田香巌髯塚

神田香巌髯塚（大徳寺玉林院/京都市北区紫野大徳寺町74）

神田喜一郎は、町衆・本両替商として繁栄した江戸時代より続く名家・神田家の出身で、神田家はまた「蔵書の家」としても知られた。

祖父の神田久信（1854～1918）は、名を信醇、字を子醇、号を香巌といい、詩を江馬天江（1825～1901）に、書を貫名海屋（1778～1863）の門人・上竹潭（1825～1895）に学んだ人で、漢籍・書画・金石文などの鑑識に優れ、京都帝室博物館の鑑別員を経て、50歳の時には同学芸委員となり、大正5年には正七位に叙せられている。

また、その優れた鑑識眼を駆使して書物の収集を行い、古文化の保護・保存に貢献した。

香巌・鬯貴（喜一郎の号）の蒐集した合計1万冊を超える蔵書は、現在、大谷大学の所蔵となっている。

大徳寺の塔頭・玉林院には香巌の遺髯を埋めた神田香巌髯塚があり、碑文は親交のあった内藤湖南の手に成るもの。

同院の方に訪ねたが、この碑の由来はもう忘れられているようだった。

庵主がこの髯塚を訪ねたのは、実は喜一郎の墓所を掃苔する目的であって、或いはこの塚と同じ場所に墓所があるのではないかと思って探したのだが、同院には神田家関連のものは、この髯塚が唯一であった。

のちに、東山の大谷祖廟に目星を付けて探墓を試みたが、大谷本廟と違って祖廟は個人情報にうるさく、何の手がかりも掴めないまま、1万基ある広大な墓域を3時間かけて探し回るも、結局発見出来ず仕舞いであったのは無念の極み。

偶然目に入った墓所、これはあの人なのだろうか？