『東洋学の系譜』江上波夫編著
- 2016/03/13
- 18:26
『東洋学の系譜』江上波夫編著(大修館書店)
大修館書店から江上波夫編著として出ている『東洋学の系譜』は、正続合わせて我が国の代表的な東洋学者48人の簡単な評伝を収め、日本の東洋学の歩みを知る上でも中々に便利な一冊(正確には二冊)となっている。
もともとは『月刊しにか』における連載記事の書籍化で、92年に出た第1集では主として我が国東洋学の草創期にその礎を築いた先駆的学者を収め、94年の第2集では大正から昭和にかけて活躍した人々(多くは第1集で紹介されている学者の弟子筋)を中心に紹介している。
もっとも、本書で扱う“東洋”は、インド、西域、蒙古など、我々一般のイメージよりも広い範囲を包含しているため、大谷光瑞(1876~ 1948)や河口慧海(1866~1945)など、「東洋学?」と感じる人々も入っているが、執筆者はいずれも斯界の大御所として鳴らした学者ばかりであるから筆力もかなりのものであるし、また、たいてい弟子乃至孫弟子に当たる人が執筆に当たっているから、表面的な経歴を並べるだけの無味乾燥なものと違って、人間味溢れるエピソードなども端々に織り交ぜられていて、単に読み物として読んでも楽しい。
個人的にはその流麗極まりない文体に最も敬愛の念を抱いている植村清二先生(1901~1987)が入っていないのがやや不満で、連載時まだ存命だった為に宮崎市定先生(1901~1995)が加えられていないのも少々物足りない。
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