『不老・長寿への挑戦~瓊玉膏未病法~』粟島行春著
- 2016/05/01
- 14:09
『不老・長寿への挑戦~瓊玉膏未病法~』粟島行春著(富民協会/1982年刊)
粟島行春先生の『不老・長寿への挑戦』は、瓊玉膏の解説書であると同時に道家医学の優れた概説ともなっている。
本書は、漢方書としては粟島師の処女作に当たり、時代的な内容の古さや若書き故の誤りもあるけれど、筆致は軽快にして情熱的で、先生の当時の熱気が伝わってくるようだ。
巻頭には、当時参議院議員で生理学の世界的権威でもあった高木健太郎先生(1910~1990)の推薦文と矢数道明先生(1905~2002)による序文が付されている。
当初、序文は交流のあった湯川秀樹博士(1907~1981)に依頼する算段だったらしいが、湯川邸を訪問した時には、既にアルツハイマーの進行で博士は人事不省に陥っておられ、断念せざるを得なかったらしい。
商品宣伝のバイブル本的な臭気が漂っているのは玉に瑕だが、東洋医学の起源論から瓊玉膏を通じた本草学の解説まで、東洋医学の入門書としてもまずまず良く出来ていると思う(この粟島師のバイブル本的傾向が最も色濃く出た書物がミキプルーン向けに書かれた『驚異のプルーン』である)。
何度か版を重ねたようで、初期の版にはハードカバーのものもあったのだが、残念ながら庵主は未だ古書市場にて同版を入手出来ずに居る。
本書を用いた代理店による行き過ぎた販売行為があったことと、115頁の図が誤って左右逆になっていたことから、粟島師はこの本を絶版とされ、以降二度と再販されることはなかった。
出版後、安藤昌益に注目した御研究の飛躍的な進展もあったので、若書き故の恥ずかしさのようなものを感じておられたのかもしれない。
一時期は古書価も高かったが、最近は比較的安価で入手出来るようになったようだ(なにせ信州薬品がもう無いから代理店の需要が減少したのだろう)。
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