蒼流庵蔵書あれこれ~其の壱~
- 2016/08/14
- 10:06
「本を貸しておくれヨ」なんて言われるのも鬱陶しいが、「なぁなぁ、蒼流庵ちゃん、ちょいと書庫を見せておくれヨ」と、兎小屋の如き我が蒼流庵へ押しかけられるのも困りものだ。
蒼流庵には稀覯本の類は殆ど無いし、スペースの関係上、収蔵出来る冊数には限りがあるので、定期的な整理を行っており、数え上げたことこそ無いけれど、所蔵せし書物は恐らく五千冊程度だろうと思う。
そんな貧弱な書庫はわざわざお見せするに足らない。
だいたい、蔵書家と呼ばれるには最低でも1万冊は所蔵していなくてはならないだろう。
と言っても、人さまの書棚を覗き見たいという心情は、私にも似たようなものがあるだけに、分からぬでもない。
相手の知的背景を形成しているのが如何なる書物であるのかは、中々興味を引かれる主題である。
そこで、「なぁなぁ、蒼流庵ちゃん云々」という今後の申し出を謝絶する意味も含めて、ささやかな我が書架をお目にかけ、読者諸賢の好奇心を満たしたいと思う。
五反田の空中浮揚行者の本はやっぱり出帆新社時代のものが一番だ。
最近の本は如何にも俗っぽくて手に取る気が起きない。
『漢文法基礎』は、超古書価が高かった頃に四天王寺青空古書市のワゴンセールで100円で掘り出したもの。
最近、講談社学術文庫に入って価値が一気に下がってしまったゼ、ちくしょう。
「この人の書いたものは全部読みたい」という気にさせられたのは僅か数名の書き手だけだが、劇作家の山崎正和氏はそんな数少ない書き手の一人である。
反米陣営からは「アメリカの手先」と揶揄されるが、これほど明晰な論理と文体を持った論客はそう居るものではない。
山田孝男の『瞑想のススメ』は、大陸書房から出た旧版の方が勢いがあって良かった気がする。
『頭脳の果て』はその昔2ちゃんか何かで火がついて、一時期2万円程度の古書価で取引されていた時代がある。
能力開発系の本では中々の良著ではなかろうか。
忰山紀一の『千島学説入門』は、千島学説の最良の入門書であろう。
この辺りは、食養や水について熱心に研究していた頃読んでいた本。
シャンバラ本の横にある本は、昔庵主の書いた文章が大幅に剽窃されている問題作(著者はカツラ野郎)。
宗教に関心があった頃は、学研のブックスエソテリカシリーズに随分お世話になった。
徹底してルビが振ってあるのが独学者には有難かった記憶がある。
一番好きだったのはシリーズ18の『神秘学の本』。
工作舎の『植物の神秘生活』も好きな本だ。
長島乙吉の『薬石の研究』は、国会図書館はおろか京都の益富地学会館にも所蔵が無いもので、稀覯本の範疇に入るかもしれない。
『漢方 湿疹・皮膚炎・じんましんの治し方』は、西脇先生の薬局でサインを頂戴したお宝本。
小室直樹の『日本衆合主義の魔力』、長谷川慶太郎の『中国近代化の幻想』いずれも当時入手するのに何年もかかった想い出の古書だ。
どちらの著者も後に安易な口述筆記に基づいた本を量産するようになってしまったが、この頃のものは活字に迫力があった。
続く・・・。
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