蒼流庵蔵書あれこれ~其の五~
- 2016/08/18
- 18:49
嗚呼、岩波文庫は何故にこれほど高貴でエレガントな気配を漂わせるのだろう。
『ギリシア・ローマ抒情詩選』の訳者・呉茂一は、新潮文庫のロングセラー『ギリシア神話』の著者として広く読まれた人だが、日本医史学会の初代理事長で我が国精神医学のパイオニア・呉秀三の子息であることを、恥ずかしながら私は最近まで知らなかった(呉秀三の掃苔を行った際、横に茂一の墓があるのに気付いた)。
極楽とんぼと言えば、ロリコン野郎の山本が遂に復帰したね。
緑版は手をつけていないものが多い。
斎藤茂吉といえば、歌人のイメージばかり強いが、随筆の名手でもあって、特に「ドナウ源流行」は日本人の手になる紀行文では白眉中の白眉。
最近の人には「あぁ、モタさんの親父ね」などと、斎藤茂太の付属品のような扱いを受けているらしいが、とんでもない話だ。
比較的創刊の新しい文庫では、ちくま学芸文庫が好きだ。
阿房を寄せ付けない硬派なラインナップがまず良いし、値段と紙質が一致しているのも又良い。
立花隆が「知の巨人」と呼ぶに相応しい人かどうかは一先ず置いて、『日本共産党の研究』に代表される初期の著作は優れた仕事だったと思う。
自然科学の方は専門家から「所詮は素人」と馬鹿にされているらしい。
この人の本では1971年の『思考の技術』(のち『エコロジー的思考のすすめ』と改題して中公文庫入り)が一番良いと思う。
データには古さもあるが、非常にしっかりした考え方が述べられていて、大変関心した記憶がある。
カラフルになる前の講談社文庫は最強の紙質を誇った。
武田泰淳の『司馬遷~史記の世界~』は名著として知られているが、さっぱり印象に残らない本だった。
河出文庫の種村季弘シリーズは、チマチマ集めたお気に入り。
前衛短歌の塚本邦雄が『十二神将変』などという推理小説を書いていることを意外に思う人も居よう。
同じく河出文庫の澁澤龍彦シリーズ。
まだまだ、コンプリートには程遠い。
エッセーの類もこれくらいの程度のものが読みたいものだ。
今は無き福武文庫は、改めて見ると、紙質こそ悪いが味のある作品が入っていたと思う。
数は少ないが、ミステリーも無いではない。
続く・・・。
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