占いにおいて吉凶を断ずることは意外に難しい。
それは、どんなことでも物事は大抵多面的で、一部分だけを見ていては全体を正しく認識出来ないというのに似ている。
ピラミッドだって、五面の内、どこか一面だけを目にしたのでは、正確な全体像など把握出来っこない。
占い、特に卜占の難しさの一つはこういう点にもあるように思う。
こんな話がある。
二人の易占家が或る国家の盛衰を占って、占断が分れた。
一人は此の国は今後さらに盛運に向かうと読み、もう一人は衰えると読んだ。
この点だけ見れば、やはり当たるも八卦当たらぬも八卦といった印象を拭えまい。
しかし、実は二人とも的占だったのである。
この国はその後軍国化を進めて軍事大国になり、確かに強国にはなったが、分を弁えぬ軍国化は経済を破綻させる結果を招いたのだ。
そして、あとで卦爻を読み返せば、そのことは、二人の得卦にしかと表れていたという。
つまり、併占で結果が分れたからといって、どちらかが誤占であるとは一概には言えないところがある訳だ。
ただ、やはり名人と呼ばれる域に達した者同士であったなら、こういった占断の相違はどれ位あり得るだろうか。
先ほどのピラミッドの譬えを持ち出せば、確かに一面だけを見せられたのではどうにもなるまいが、実際には易占などで示されるのは、少し斜めに角度が付いた状態から見せられるようなことが多い(気がする)。
従って、その微妙な角度から垣間見える情報を如何に見逃さないかが、凡庸な占者と非凡な占者の分かれ目でもあろう。
誤占を防ぐための一つの方法が分占であるが、これはまた後に取り上げることにしたい。
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