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貞字卜問説
“貞”字の解釈についてご質問いたします。
>困:亨,贞,大人吉,无咎,有言不信。
>彖曰:困,刚掩也。 险以说,困而不失其所,亨;其唯君子乎? 贞大人吉,以刚中也。 有言不信,尚口乃穷也。
ここの”貞”の字について。
庵主は、これら全部”卜問”の意であるとされるのでしょうか?
ご教授いただけましたら幸いです。
>困:亨,贞,大人吉,无咎,有言不信。
>彖曰:困,刚掩也。 险以说,困而不失其所,亨;其唯君子乎? 贞大人吉,以刚中也。 有言不信,尚口乃穷也。
ここの”貞”の字について。
庵主は、これら全部”卜問”の意であるとされるのでしょうか?
ご教授いただけましたら幸いです。
Re: 貞字卜問説
鴻古さま
御質問ありがとうございます。
お尋ねの件、大変鋭い問題提起を含むものと思います。
結局のところ、易辞の由来が何であるのか、非常に古い卜辞や籤などを後世の人が配列して成立したとする場合、配列者が原義通りに解していたのか、そうではないのか、これは現時点では断定が難しい部分があるように思います。
困卦彖の「貞」字は、明らか「“卜”問」ではなく、単に「問」という程度の意味でしょう。
師卦の「貞丈人吉」も同様の構造ですが、基本的に「貞」字を「卜問」と解する三浦國雄氏の注解でも、これを卜問とは流石に取れないので、単に「問う」と解しています。
ですので、小生が「全部”卜問”の意である」と解するかという事になりますと、Noというお答えをすることになります。
なお、少し話が逸れるかもしれませんが、私は貞字を「正」の意に解する立場をも完全に排除する訳ではなく、若干ですが許容する余地を残しています。
『論語』衛霊公第十五の「子曰く、君子は貞にして諒(小さな信義、無教養な人間の持つせせこましい意識)ならず」は「卜問」の意ではないので「貞正」の意が相当古くからあることは間違いありません。
また、易は本来儒家と関係ない書物で、貞字を貞正に読むのは儒家者流の一解釈に過ぎないとするのも故無しとは致しませんが、『老子』中の貞字も卜問の意ではなく、例えば、第十八章の「国家昏乱して貞臣あり」や第三十九章の「王侯は一を得て以て天下の貞と為る」も同様に「卜問」でも「問」でもありませんので、儒者だけが貞字を「貞正」「貞固」の意としている訳ではないのは確実です。
ですので、経文の元になった辞は兎も角、配列者が貞正読みをしていた可能性については若干含みを残しておきたいと思っています。
お尋ねの件とは少し話が逸れてしまいましたが、以上返答とさせて頂きます。
御質問ありがとうございます。
お尋ねの件、大変鋭い問題提起を含むものと思います。
結局のところ、易辞の由来が何であるのか、非常に古い卜辞や籤などを後世の人が配列して成立したとする場合、配列者が原義通りに解していたのか、そうではないのか、これは現時点では断定が難しい部分があるように思います。
困卦彖の「貞」字は、明らか「“卜”問」ではなく、単に「問」という程度の意味でしょう。
師卦の「貞丈人吉」も同様の構造ですが、基本的に「貞」字を「卜問」と解する三浦國雄氏の注解でも、これを卜問とは流石に取れないので、単に「問う」と解しています。
ですので、小生が「全部”卜問”の意である」と解するかという事になりますと、Noというお答えをすることになります。
なお、少し話が逸れるかもしれませんが、私は貞字を「正」の意に解する立場をも完全に排除する訳ではなく、若干ですが許容する余地を残しています。
『論語』衛霊公第十五の「子曰く、君子は貞にして諒(小さな信義、無教養な人間の持つせせこましい意識)ならず」は「卜問」の意ではないので「貞正」の意が相当古くからあることは間違いありません。
また、易は本来儒家と関係ない書物で、貞字を貞正に読むのは儒家者流の一解釈に過ぎないとするのも故無しとは致しませんが、『老子』中の貞字も卜問の意ではなく、例えば、第十八章の「国家昏乱して貞臣あり」や第三十九章の「王侯は一を得て以て天下の貞と為る」も同様に「卜問」でも「問」でもありませんので、儒者だけが貞字を「貞正」「貞固」の意としている訳ではないのは確実です。
ですので、経文の元になった辞は兎も角、配列者が貞正読みをしていた可能性については若干含みを残しておきたいと思っています。
お尋ねの件とは少し話が逸れてしまいましたが、以上返答とさせて頂きます。
No title
庵主 殿
貞の意味は”卜問”であるとお聞きして、全ての文脈でそれを前提にしなければいけないかと思い、いささか驚いた次第です。
原意は”卜问”であると改めて理解しました。お騒がせして大変失礼いたしました。
貞の意味は”卜問”であるとお聞きして、全ての文脈でそれを前提にしなければいけないかと思い、いささか驚いた次第です。
原意は”卜问”であると改めて理解しました。お騒がせして大変失礼いたしました。
Re: No title
鴻古さま
何かお役に立てましたなら幸いです。
原義に沿った読みと、後代の儒家的な解釈は両方知っておかれると良いですね。
あくまで私の場合ですが、儒家的な読み8、原義読み(?というのが適切な表現か判りませんが)2くらいで見て居ます。
記事にありますように、実際に卜筮を使おうということになりますと、従来の積み重ねも無視できませんもので。
ただ、原義読みを志向するものも怪しい部分かかなり多く、先に挙げました三浦國雄先生が依拠している近代の考古派や訓詁派、疑古派の解も結構バラバラですし、珍奇かつ新奇な説に寄りかかることには不安があります。
もっとも「貞」字に関しては、「卜問」を基本的に意味することは確実で、爻辞も「卜問」で解した方が従来の説よりすんなり意味が通る箇所が多いです。
屯5,豫5の「貞」なんか特にそうですね。
何かお役に立てましたなら幸いです。
原義に沿った読みと、後代の儒家的な解釈は両方知っておかれると良いですね。
あくまで私の場合ですが、儒家的な読み8、原義読み(?というのが適切な表現か判りませんが)2くらいで見て居ます。
記事にありますように、実際に卜筮を使おうということになりますと、従来の積み重ねも無視できませんもので。
ただ、原義読みを志向するものも怪しい部分かかなり多く、先に挙げました三浦國雄先生が依拠している近代の考古派や訓詁派、疑古派の解も結構バラバラですし、珍奇かつ新奇な説に寄りかかることには不安があります。
もっとも「貞」字に関しては、「卜問」を基本的に意味することは確実で、爻辞も「卜問」で解した方が従来の説よりすんなり意味が通る箇所が多いです。
屯5,豫5の「貞」なんか特にそうですね。