象意考と卦象解
- 2014/01/20
- 22:08
先に、白蛾の「象意考」は、随貞の「卦象解」が原型であろうとする紀藤先生の見立てを紹介したが、二者を詳細に比較した研究を「随貞と白蛾の卦象意識」と題して、『易学研究』に発表されたのは広瀬宏道先生である。
簡単に要約して御紹介しようと思う。
まず、両者に一致を見るものには以下のようなものがある。
水天需→密雲不雨
水地比→衆星拱比
天沢履→如履虎尾
火雷噬嗑→頤中有物
山地剥→去旧生新
天雷无妄→石中蘊玉
沢山咸→山沢通気
以下、類似の表現があるもので、( )内が白蛾
天水訟→天水相違(天水違行)
地水師→以寡服衆(以寡伏衆)
天火同人→二人分金(管鮑分金)
天山遯→豹隠南山(貴人隠山)
火風鼎→鼎鼎調和(鼎鼎調味)
震為雷→有声無形(有声无形)
風沢中孚→鶴啼子和(鶴鳴子和)
雷山小過→飛鳥遺音(飛鳥過山)
特徴として、随貞の方には、とりかえ表現やくりかえしが目立つ。
升の大象の「積小以高大」による「積小成大」が、升はもとより大畜・艮(積小成高)・漸でくりかえされ、「高山植木」が、升・漸に共通する。
あるいは、屯の「万物如生」・蒙の「万物叢生」・予の「万物発生」とか、无妄の「守旧安常」・大過と井の「守静安常」、剥の「去旧生新」・革の「改旧従新」・鼎の「去旧取新」、また、蹇の「背明向暗」・豊の「背闇向明」のように、芸がない随貞のほうがネタ元であると推測するのが自然であろう。
他にも、比較すると、以下のような傾向性の差異があるようだ。
・白蛾よりも随貞の方に対句表現が目につく。
・随貞の方が、宝や玉など財物の素材を多く用いている(ex蒙の人蔵宝禄・・・)。
・白蛾には、植物を素材としたものが多い(ex蒙の生花未開・・・)
・白蛾には、美文表現が多い(ex否の寒鶯待春・・・)
・白蛾には、故事にちなんだものが多い(ex萃の鯉登竜門)
・白蛾には、通俗的表現が多い(ex大過の馬走花街・・・)
白蛾の方が表現が豊かで、バリエーションも多いことから、やはりパクったのは白蛾の方と見るべきであろう。
※以上は広瀬論文の要約であるが、卦象解は実際には明代の断易書に見えるものをそのまま失敬しただけであることが判っている。
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