天眼通~新井白蛾秘伝①~
- 2014/01/26
- 17:10
新井白蛾秘伝集(占術書刊行会・2004年復刻)
白蛾の秘伝とされる秘術“天眼通”について少しご紹介する。
これは、変爻によって占事の過・現・未を察する方法であり、“天眼通”は、通常は「テンガンツウ」とルビが振られることが多いが、『易学通変』(加藤大岳著)が引く新井家秘伝書の一文「之ハ佛語ナリ。マタ天耳通ト云フモノアレドモ其伝ハ無シ。今ノ天眼通ハ元・同化ノ法トアリシヲ、山崎先生故アリテ此ノ號ニ改ム」からすると、「テンゲンツウ」と読む方が正しいようである(眼は漢音ガン、呉音ゲンであり、仏教語は呉音で読むのが習わしであるから、仏教語由来とすればテンゲンツウとすべきであろう)。
具体的には、卦の初爻を変じて過去を観、上爻を変じて未来を観、初爻上爻をひっくり返して最終的な状態を観るというもので、本当はこれがイコール天眼通という訳ではないのだが、白蛾の天眼通といえばこのやり方という風に理解されているらしいので、煩雑さを避けるために簡単な紹介に止めておく。
この方法は、中筮で不変卦を得た場合に活用出来るとする人がいるけれど、私は不変卦を得た場合は、不変卦を得たということ自体に意味があるので、ただちに天眼通を適用することには大いに疑問を感じる。
不変卦を得て、特に判断に迷った場合に補助的に用いてみる程度がせいぜいではなかろうか。
以下に、白蛾の占例を引いて、ご参考に供しようと思う。
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伊勢の国の儒者、御師病気につき京へ出養生せんと云ふを筮して家人の不変を得たり(不変卦を得ていることから、この儒者は三変筮でないことが分かる)。
家人は家の人と云ふ文字なれば、出養生の事家内の人の言分多き方に付く可しと云ふ。
之を白蛾先生に問ふ。
先生曰く、家人は婦人の卦なり。天眼にて初爻を変ずれば漸はぜんぜんと病深くなる心あり。
而して漸の内卦は艮なり。艮は土にして湿気なり。湿気あれば腫れるなり。初爻なれば足とす。故に足に腫来る事を知る
二三日も過ぎなば足に腫れ来らんと云ふ。
又、天眼にて上爻を変じて見れば既済の卦となり、先天図の後卦も亦既済の卦なり。既済は男女組合の卦なれば色情の意あり
故に虚の病なるを知る。
而して上爻変の既済なれば既済も終りの既済なり。既済は盡きる意、終りの既済はいよいよ盡きる理あり。
又先天図の後卦も既済なれば後卦は終を主る故にいよいよ盡きる意あり彌死する事を知る。
断に曰く、此人養生に行く事は扨おき、五六日も過ぎなば死せんと。
果して然り。
五六日といふは天眼通の上爻に當る故なり。
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